同じ出来事が起きても人によって感情や行動が異なるのはなぜ?

私はある疑問を持っていました。

「同じ出来事が起きても、人によって感じ方や行動が違う。あまり気にせずスルーする人や、愚痴って終わる人もいれば、それが原因で自傷行為や自己否定、引きこもりになる人もいる。ここには何の違いがあるのか?」

今回紹介する違いは2つです。

1,期待の違い

2,ポジティブ感情とネガティブ感情の割合

1,期待の違い

人は自分の期待が裏切られることによりマイナス感情を感じます*

「私が否定されるはずがない」という期待を持っていれば、否定されたときに怒り、悲しみ、不安などを感じます。

しかし、「自分と人は違う考えを持っている」という期待を持っていれば、自分を否定されたときに「違う考えの人もいるよね」と、期待との差がないため受け入れやすくなります。

期待するとマイナス感情が沸く・・・。では期待することは悪なのでしょうか?

期待がもたらす効果もあります。
例えば、「家族に料理ができるようになってほしい」という期待があり、それを伝えて料理を教えることで、料理できるようになった!というように。

重要なのは 適切な期待値をもつこと です*2


「料理ができるようになってほしい」からといって、料理を見たこともしたこともない3歳の子どもに「クリームシチューを作っておいてね」と材料を渡しても作れないことは想像できるかと思います。

これは大げさな例ですが、日常で私は期待値を誤ることがあります。

私が「これならできそう」と子どもにお願いしたことが、子どもにとっては難しいことだった(難しいタイミングだった)ということがあります。

こんな失敗を通してコミュニケーションや会話をして、自分たちにとってちょうどいい期待値を見つけています。

自分にとっても同じです。自分に高すぎる期待をしていると、その分イライラや落ち込みをたくさん感じることになります。自分にもちょうどいい期待をしているか時々振り返ると心がほぐれます。

2,ポジティブ感情とネガティブ感情の割合

人が前向きに行動するためには、ポジティブ感情とネガティブ感情の割合がおよそ3:1から8:1であることが目安です*3
この割合になると、前向きに行動できたり、困難を乗り越える力が出たり、繁栄すると言われています。

つまり、3:1以上のポジティブ感情を持っている人と、そうでない人、または同じ人でもその割合がその時にどうなのかによって、同じ困難を体験しても感じ方や行動に違いが出るのではないかということです。

不登校支援の取り組みで、「親が子どものよいところを見つけて褒める・感謝する声かけを続ける」という方法があります*4
様々なペアレントトレーニングや心理療法でも、相手のよいところを見つけて本人に伝えるのは基本になっています*
夫婦調査でも、長続きし両者が満足している夫婦には4:1の割合を上回るポジティブな行動や言動がありました*。これに対し離婚に向かっている夫婦は3:1を大きく下回っていました。

では、ネガティブ感情は悪なのでしょうか?

ネガティブ感情は生存に欠かせない大切な感情です。
人は恐怖や嫌悪を感じることで、そこから逃れようとし、命を守っています*1
ネガティブ感情は自分の性格を見つめなおし改善するきっかけにもなってくれます*7
謙虚さ、道徳的配慮、思いやり、共感、分別がつくなどのメリットもあります*3*8

しかし、ネガティブ感情が大きすぎると、デメリットが生じます。
自信喪失・不安・恐怖が強まり、引きこもるなど。

なので、大切なのがポジティブ感情との割合です。
自身がマイナス感情を感じることが多いなと感じたら、意識的にポジティブ感情を感じられる行動をとることがおすすめです。
そのため、その方法をいくつか知っておくことも大切です。友人と話す、好きな番組を見る、音楽を聴くなど・・・。

では、家族や周りの人がマイナス感情に飲み込まれそうになっている時、またはその予防のために、私たちにできることは何でしょうか?

その人に感謝していることを伝える、いいなと思うところを伝える、相手がポジティブ感情を感じられるような活動に誘う、一緒に楽しむなどです。

子どもにしても、家族にしても、私たちには見えない世界があります。
職場や学校で嫌なことがあったなど。
私たちには見えないその世界で、ネガティブ感情をたくさん経験しているとしたら、家ではその3倍ポジティブ感情を感じることで、やっと前向きになれるということです。

ここで面白いのが、ポジティブ感情が8:1を超えると逆効果になる*3という点です。
ポジティブ感情もネガティブ感情も大切なのです。
何を学んでも結局行きつく先は『バランス』です。
人は性格も違いますので、このバランスは人それぞれ。
3:1~8:1を目安に、自分を振り返りながら、最適なバランスを探していきます。



参考

*1 アンガーマネジメント
*2 トリプルP(サンダース)
*3 『ポジティブ心理学が1冊でわかる本』イローナ・ボニウェル
*4『不登校は1日30分の働きかけで99%解決する』森田直樹
*5 ペアレント・トレーニング(厚生労働省)、トリプルP、PCIT、CAREプログラム、トリプルP、IY、CPRT
*6 ゴットマン1994
*7 リチャード・ラザルス2003
*8 ヤング・エイゼンドラス2003

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